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海外文献紹介

Short-term plyometric training improves running economy in highly trained middle and long distance runners.
Saunders, P. U., Telford, R. D., Pyne, D. B., Peltola, E. M., Cunningham, R. B., Gore, C.J., and Hawley, J. A.
J. Strength Cond. Res. 20(4): 947-954. 2006.

文献リンク
 

【概要】 パフォーマンスに影響を与える重要な要因として、ランニングエコノミーが多くの文献で指摘されている。ランニングエコノミーを改善するためのトレーニング手段として、著者らは高地トレーニング(シュミュレートした減圧トレーニングルームを使用)の効果をこれまでに発表している。今回紹介する文献では、ランニングエコノミーを改善するためのトレーニング手段として、プライオメトリック・トレーニングの効果を分析している。

被験者は、高いレベルの男性長距離アスリート15名(6名は国際レベル、15人の3000mの平均タイム約8分30秒)で、競技レベル等が同等になるように2群に分けられた。1群(PLY群)には通常のランニングトレーニングにプライオメトリック・トレーニング(9週間、最初の1週間はプライオメトリック・トレーニング自体の練習)を加え、ランニングトレーニングのみのコントロール群とのトレーニング効果の比較を行った。

ランニングエコノミーは、トレッドミル上で時速14km、16km、18kmで4分間ランニングさせ、最後の1分間の酸素摂取量とした。同時に最大酸素量、フォースプレート上で各種の筋パワー(最大筋パワー、力の立ち上がり等)、5回リバウンドジャンプ高を測定している。

分析の結果、PLY群の介入実験前、9週間後の時速18kmでのランニングエコノミーのみに有意差が見られ、時速14km、16kmのランニングエコノミーでは有意差を得ることができなかった。コントロール群では介入前後の有意差が見られなかった。心肺機能(最大酸素摂取量)はPLY群、コントロール群ともに介入前後に有意差が見られなかった。また、筋パワー、5回リバウンドジャンプ高は、PLY群において介入後に改善傾向はあったものの有意とまではいえなかった。コントロール群では介入前後の有意差が見られなかった。

【注目される点】

ランニングエコノミーひいてはランニングパフォーマンスを向上させるトレーニング手段として、各種のレジスタンストレーニングが考えられている。近年、筋肥大を起こさず筋の機能向上(弾性エネルギーの貯蔵・利用、ストレッチ・ショートニングサイクルの利用)が期待されるプライオメトリック・トレーニングが注目され、トレーニング効果を分析した文献も増えつつある。

しかし、ほとんどの文献の被験者は、一般のランナー、せいぜい中程度のレベルであり、トレーナビリティが高く、どんなトレーニング手段でも効果的かもしれない。

この文献の被験者は、国内(オーストラリア)のトップレベルのアスリートであり、通常のランニング主体のトレーニングでは、ランニングエコノミーの改善が限界に近づきつつあるランナー達である。こうした高度なレベルで、プライオメトリック・トレーニングがランニングエコノミーの改善に役立つ可能性が示された点は注目される。

特に時速18kmでのランニングエコノミーが改善されたデータは、高速のランニングでは、より弾性エネルギーの貯蔵・利用、ストレッチ・シュートニングサイクルの利用が重要になることを示唆するものである。今後、高速化する世界の長距離レースに対応していくためには、プライオメトリック・トレーニングの重要性が高いと考えられる。

(大阪学院大学 山内 武)