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海外文献紹介

A comparison of methods for estimating the lactate threshold
McGehee, J. C., Tanner, C. J. and Houmard, J. A.
J. Strength Cond. Res. 19(3): 553-558. 2005.

文献リンク
 

運動強度の増加によって血中乳酸濃度は指数関数的に上昇し、この上昇ポイントは乳酸性閾値(LT)として一般的に知られている。LTはランナーの競技力の比較や持久力の変化を評価するために用いられている。実験室でLTを求めるためには、少なくとも乳酸分析器、血液サンプル、そしてそれらを扱うための専門的な知識が必要とされている。そこでコーチや研究者らは簡便にLTを求めるための方法としてVDOT法や30分間タイムトライアルなどの推定法を開発した。しかしながら、これらの推定法の精度は未だ明らかにされていない。この研究の目的は、 LTを ランニングから求めるVDOT法や30分間タイムトライアルの精度をコーチや選手に提供することに加えて、コンコーニテストと2マイルタイムトライアルから求められるLTの妥当性を検討することである。※なお、この研究のLTとは、OBLAのことを意味している。以下、LTと記しているのはOBLA(血中乳酸値4.0mM:Onset of Blood Lactate Accumulation)のことであるが、原著に従ってここではLTとしている。

被験者は競技志向にある持久性ランナーとトライアスリートの27名(男性24名、女性3名:平均年齢33.2歳、5kmの平均記録17分42秒、競技歴は3年以上)であった。LTを求めるために実験室にてトレッドミルによる間欠的速度漸増負荷法によって測定を行った。実験室での測定ではトレッドミルの傾斜角は地面での走行と同じ消費カロリーが得られるように1%の傾斜が付けられた。

LTはLTvisual、LTD-max、LTΔ1の3つから求められ、さらに実験室でのテストで一般的に用いられている血中乳酸濃度4.0mM(LT4.0)の運動強度も加えられた。推定法としては4つのテスト(VDOT法、3200mタイムトライアル、30分間タイムトライアル、コンコーニテスト)を行った。3つのLTの定義は以下の通りである。LTvisualとは視覚的にベースラインよりも乳酸値が急激に上昇するポイント。LTD-maxとはラクテートカーブの開始点と終点を直線で結び、この直線とラクテートカーブで最も距離のあるポイントからラクテートカーブに向けて垂線を引き交わったポイント。

LTΔ1とは、プロトコールにおいて直前のステージの乳酸値よりも1mM以上上昇したポイント。一方、推定法におけるVDOT法とは400mからマラソンまでの競技記録を基にDanielsらによって考案されたLT(このLTとは血中乳酸濃度4.0mMである)を求める方法であり、この研究では400mと800m のタイムトライアルを行っている。その記録をDanielらの換算表に当てはめてLTを求める。3200m タイムトライアルは、トラックを使って最大努力で走行し、そのタイムをひとつの公式に代入してLT(血中乳酸濃度4.0mM)を求める推定法である。30分間タイムトライアルは、30分間走での走行距離と後半20分間の平均心拍数からLTスピードと心拍数を求める方法である。この研究ではトレッドミル走(傾斜角1%)にて自分のペースでウォーミングアップを行い、その後レーススピードまで徐々に速度を上げて30分間走を開始している。テスト中はいつでも速度を変更でき、経過時間は5分毎に被験者へ知らされるが、実際のスピードと走行距離は知らされない。テスト終了後、30分間の走行距離(m)を時間(1800秒)で割ることで平均スピードを求めて、LTスピードとしている。

最後の方法はコンコーニテストである。この研究の結果、LTvisual(3.7m/sec )、LTD-max(3.7m/sec)、LTΔ1(3.8m/sec)の3つの走速度に差は認められなかった。したがって、基準値となるLTは誰にでも簡便に求められるLTΔ1とLT4.0(3.9m/sec)が選択された。

30分間タイムトライアルのLTスピードはLTΔ1とLT4.0、 VDOT法のLTスピードはLT4.0スピードと差が認められなかった。

LTスピードの心拍数(LTΔ1:172拍とLT4.0:175拍)は30分間タイムトライアルと差が認められなかった。

すなわち、LTスピードを求めるのであれば、30分間タイムトライアルかVDOT法を用いることが有効であり、LTのスピードと心拍数を求めるのであれば30分間タイムトライアルを行うべきであると指摘している。また仮にトレッドミルがなくても、トラックや正確に距離が計測されたコースさえあれば、同様の結果が得られるだろうと述べている。

(財団法人京都地域医療学際研究所スポーツ医科学センター 足立哲司)