ランニング・カフェ
ランニングに直結する内容、ランニングに示唆を与えるスポーツ科学の内容のエッセイを掲載していきます。
記事一覧
第56話 ラドクリフのモニタリングトレーニングにみる記録変動
山地啓司(初代ランニング学会会長)
本稿では、Jones(2006)の研究を手がかりとして、ラドクリフが世界記録を樹立するまでの生理的機能の改善が記録(1998~2003)へどのような影響を与えたかを検証してみた。
第55話 バックパックの重さと呼吸への影響
山地啓司(初代ランニング学会会長)
子どもにとって小学1年生から始まる通学時のランドセルの重みは耐えなければならない最初の試練であろう。
第54話 速く長く走るフォームの矯正法
山地啓司(初代ランニング学会会長)
小学校に入学する頃になると速く走りたいという欲求が芽生えてくる。
第53話 ネット社会の職階のフラット化
山地啓司(初代ランニング学会会長)
テクノロジーの発展に伴う情報機器の普及は社会や日常生活の活動を大きく変化させている。
第52話 最大酸素摂取量の常識・非常識
山地啓司(初代ランニング学会会長)
英国のAV. Hillは最大酸素摂取量(VO2max)を比較・評価する際、体重1kg当たりのVO2max(ml/kg/min)を用いた。それから1世紀が経過しようとしているが、この間研究者の多くがその妥当性について議論してきた。
第51話 スポーツ選手の安全・安心をいかに確保するか?
山地啓司(初代ランニング学会会長)
読売新聞夕刊(2020.7:4付)に大阪大学や国立スポーツ科学センターのチームが歴代五輪選手の健康に関して追跡調査を行うとの記事があった。
第50話 呼吸筋を強くすると寿命が長くなる?
山地啓司(初代ランニング学会会長)
肺の大きさと機能は身長と年齢に左右される。肺の大きさ(肺容量)は体重(量育)より身長(長育)と密接な関係がある。
第49話 呼吸筋は全身持久性の主たる制限因子である
山地啓司(初代ランニング学会会長)
近代生理学の祖といわれる英国のノーベル賞博士AV Hillは1924年に「全身持久性の制限因子が心臓・血管を中心とする酸素運搬系にある」と述べた。
第48話 過ぎたるは及ばざるがごとし!
山地啓司(初代ランニング学会会長)
人間は、快楽、幸せ、利便性、効率、安心などの欲望を満たそうとする動物である。
第47話 努力とは!
山地啓司(初代ランニング学会会長)
かつて日本人の若者は「“努力”と“辛抱”は買ってでもしなさい」、と教えられた。
第46話 一流のスポーツ選手は高度な感性と知力を有する
山地啓司(初代ランニング学会会長)
サイエンス(科学)は環境(自然や社会等)に存在する様々な事象の成り立ち(構造)や働き(機能)を客観的に体系化し、さらに、得られた理論や知識を用いてテクノロジー(科学技術)を創造・発展させることによって、人々の生活を物質的に豊かにした。
第45話 マラソンレースで形成される集団の性格
山地啓司(初代ランニング学会会長)
集団の成立要件は、成員の数が複数で、成員相互に連帯意識が内在していることである。マラソンのレースで形成される集団では選手の目的が明確であることから、集団の凝集性はかなり高い。
第44話 世界のマラソン界の今日的話題三話
山地啓司(初代ランニング学会会長)
最近のマラソンを振り返り、①風除け(ドラフティング)、②ホットレッグ(ランナーズハイと似て非なる)、③東アフリカ勢(高所民族)の強さについて、述べています。
第43話 スポーツによって獲得する“勘”
山地啓司(初代ランニング学会会長)
わが国の“勘”に関する研究の第1人者の黒田亮が1930年代の自らの研究をまとめた『勘の研究』(1980)が死後6年経て発刊された。
第42話 スポーツと五感
山地啓司(初代ランニング学会会長)
科学技術の進歩に伴って現代の生活の中で五感を活用することが減少し、現代人が持つ鋭敏な感性が徐々に弱体化していることが懸念される。一般にこの現象は“五感の危機”とも呼ばれている。
第41話その2 記録の“進化説”と“限界説”を考える(2)
山地啓司(初代ランニング学会会長)
前話では第1の論点として「推定式による記録変動の評価の相違」に着目した。今回は第2〜6の論点を提示しながら、記録の“進化説”と“限界説”を考える。
第41話その1 記録の“進化説”と“限界説”を考える(1)
山地啓司(初代ランニング学会会長)
20世紀末まで多くの人たちは、陸上競技の記録は永遠に伸び続けるという“進化説”を信じてきた。しかし、21世紀に入ると記録の逓減傾向が強まり近い将来記録の伸びが限界に達するのではないかという“限界説”の声が高まってきている。両者の見解の相違の“なぜ”を考えてみよう。
第40話 見え隠れするNike社のビジネス戦略
山地啓司(初代ランニング学会会長)
スポーツテクノロジーの発達はスポーツのパフォーマンスの向上に大きく貢献してきた。
第39話 ナイキの新しいシューズ(NP)の優位性
山地啓司(初代ランニング学会会長)
シューズメーカーのナイキが最近開発したロード用のシューズ(Nike prototype: NP)が世界の長距離・マラソン選手から高い評価を得ている。
第38話 最初に2時間突破するのは誰か? ―マラソン新時代主役も東アフリカ勢―
山地啓司(初代ランニング学会会長)
多くの研究者がマラソンで“いつ”2時間を突破するかについて、過去の世界記録の軌跡から推測してきた。
第37話 マラソンで風の影響を検証 ―2時間突破のさらなる方策は?―
山地啓司(初代ランニング学会会長)
マラソンの距離42.195㎞を単独で走り通すことは至難の業である。しかし、大勢のランナーと一緒に同じ目標に向かって走ると共働作業効果が得られる。さらに、集団になって走ると①ライバルに負けないように、あるいは少しでも速く走りたいという内的モチベーションが高まる。もう1つ②相互に風の抵抗を和らげるというメリットがある。今回は風の抵抗を和らげるドラフティングの効果について述べてみよう。
第36話 記録は劣化する
山地啓司(初代ランニング学会会長)
スポーツの成績(記録・勝敗・順位)は心・技・体によって決まると言われる。これらに関与する要素を抽出して科学的に評価することは可能であるが、総合的評価は実績から推測せざるを得ない。
第35話 マラソンのトップ集団にみられる社会性
山地啓司(初代ランニング学会会長)
マラソンは決まった距離をいかに速く走るかを競うスポーツである。(中略)スタートするとただちに位置争いが始まり、それが一段落すると、優勝・世界記録・日本記録・コース記録・自己記録など思い思いの記録を求める者や、ついていけるところまでついて行こうとする冒険的ランナー達の異種のトップ集団が形成される。
第34話 続・モニタリング・トレーニングの必要性
山地啓司(初代ランニング学会会長)
東京五輪の期待の星・競泳女子の池江璃花子選手はツイッターで白血病であることを公表した。(中略)豪州への高地合宿に行く前の競技会での彼女が最も得意とするバタフライの記録が自己記録よりも約4秒遅かったことを考えると、もし、モニタリング・トレーニングが実施されていれば客観的にからだの異変に気づき合宿参加の是非がその時点で検討され、もっと早く対応できたであろう。
第33話 モニタリング・トレーニング
山地啓司(初代ランニング学会会長)
“トレーニングする”とは、からだに刺激を与え、疲労し、回復するサイクルの中でからだの適応を促すことである。刺激が適切だと効果的な適応が期待でき、不十分だと適応が遅滞し、刺激が強すぎるとけがを誘発し、回復が遅いと慢性的疲労となりオーバートレーニングになる。
第32話その2 マラソンで2時間を切る条件(下)
山地啓司(初代ランニング学会会長)
マラソンレースの個人の走行スピード(Y)はエネルギーの出力の大きさ(最大酸素摂取量:VO2max×酸素摂取水準:% VO2max)(X)と、このエネルギーでいかに無駄なく維持可能な最高のスピードで走るかの能力であるランニングの経済性(RE)(a)、および、精神力(b)によって決まる。
第32話その1 マラソンで2時間を切る条件(上)
山地啓司(初代ランニング学会会長)
マラソンは42.195㎞を維持可能な最高のスピードで走る競技である。最初からハイペースで走り始め、疲労に応じて徐々にペースダウンしながらフィニッシュする、いわゆるオールアウトペース型(生理的イーブンペース型)が生理的に最も合理的である。にもかかわらず最近のマラソンは中盤から終盤にかけてペースアップするタイプが多い。
第31話 最大酸素摂取量を測って50年
山地啓司(初代ランニング学会会長)
筆者が大学院に進学した時から今年で50年が経過した.進学して最初に先輩から教わったことは最大酸素摂取量(VO2max)の測り方である。
第30話 古くて新しい呼吸の話
山地啓司(初代ランニング学会会長)
スポーツ科学の進展に伴って,昔から実践していたことが全く不合理な行為として指摘されることがある.例えば,「スポーツを行っている時暑くても水を飲むな」や「野球選手は肩を痛めるから泳ぐな」である.同じことが呼吸機能にもある.
第29話 陸上競技では、努力は素質を超えない
山地啓司(初代ランニング学会会長)
バイオ・テクノロジーの進歩によって,1978年に英国で人類史上初の体外受精による試験管ベビー(ルイーズ・ブラウン)が誕生した.それから38年経過した今日,世界では補助的生殖技術(IVF) を用いて500万人以上が誕生している.
第28話 アベレージランナーの『年齢とマラソンの記録』ー老いも若きも、マラソンは楽しいー
伊藤静夫 (ランニング学会会長)
本コラムの前号では、ランニング学会前会長の豊岡示朗先生がマラソンの記録を予測する方法について書かれた。(中略)
さて、著者は本年度からランニング学会会長を豊岡先生から引き継ぐことになった。今回、本コラムを担当するにあたり、それでは豊岡先生の前回テーマに少々関連付けて書いてみようと思い立った次第である。そこで選んだテーマが「年齢とマラソンの記録」、年齢からマラソンの記録が予測できるか、という意図である。
第27話 マラソン記録の予測方法 ー市民ランナー指導の一助としてー
豊岡示朗 (ランニング学会前会長)
この2ヵ月、マラソン記録予測法に関した資料を集めた。できるだけ簡単な1回の測定で高い確率を持って予測できる方法が無いものかと文献をめくった。今年度のマラソンシーズンに備えて、受け持っている二つのランニングクラブの指導に役立てたいと考えていたからだ。というのも、会員の市民ランナーから、『今の私はどのくらいのタイムでマラソンを走れますか?』という質問をよく受ける。
第26話 「駅伝誕生100年」②
有吉正博(ランニング学会元会長)
前話では、駅伝の原点となった丁度100年前の「東海道駅伝徒歩競走」の誕生とその概略について紹介したが、ここではそのレース経過とそのレースを走った人、またレースに関わった人たちについていくつか紹介したい。
第25話 「駅伝誕生100年」①
有吉正博(ランニング学会元会長)
本年(2017年)4月29日、京都三条大橋東詰にて、「駅伝発祥100年記念碑建立除幕式」(京都陸上競技協会主催)が行われた。1917年(大正6年)4月27日―29日、京都三条大橋から東京上野不忍池まで、日本で最初の駅伝競走、「遷都記念・東海道駅伝徒歩競走」が開催(読売新聞社主催)されてから丁度100年を記念し、記念碑が建立された。
第24話 モニタリングの実際と問題
山地啓司(初代ランニング学会会長)
第8話の「スポーツ科学の可能性と限界」で、1991年カナダの医師ギヤットが医療現場の医療ミスや医療過誤防止のために、科学的根拠に基づく医療の必要性を唱え、それが医療現場だけでなく、裁判の在り方やスポーツの指導法にまで反映される時代が来たことを述べた。
第23話 言語的コミュニケーションと非言的コミュニケーション
山地啓司(初代ランニング学会会長)
運動生理学の分野では、科学的手法で得られた客観的データ(数値)を統計的に処理し、結論を導き出す。さらに、多くの人に理解・応用してもらうために、他の研究者の研究結果と合わせて考察して客観的データを基に、言語や図表を用いて説明する。
第22話 運動と寿命
山地啓司(初代ランニング学会会長)
ギリシャ時代の哲学者ヒポクラテスは「運動を行うと短命になる」と言った。この考えは19世紀の末期まで信じられてきた。ところが、この説が実態と異なると感じたイギリスの医師モルガン(Morgan, 1873)は、1829~1867年までの39年間オックスフォード大学とケンブリッジ大学のボート対抗戦に出場した294名について追跡調査を行った。
第21話 もうひとつの心臓の話
山地啓司(初代ランニング学会会長)
夜中我々が寝ている間も心臓は休みなく働き続けている。正確には休みながら断続的に働いている。というのは、心電図にはPQRSTと符合が打たれているが、T波が終了してから次のP波が現れるまで(心臓が収縮を終えてから次に始めるまで)心臓は休んでいることになるからである。
第20話 予測・予知(読み)とスポーツ
山地啓司(初代ランニング学会会長)
反応時間は一般に、電燈がついたら(刺激)できるだけ早くジャンプ(反応)し、その間の速さで測定される。その伝達経路は、電燈がつくと目の網膜にある光の受容器でインパルスが発生し、インパルスが感覚神経を経由して大脳に知らせる。
第19話 現代は正確に「測る」ことがむずかしくなった
山地啓司(初代ランニング学会会長)
今日の科学技術の進歩は著しい。かつて自動車はボンネットを挙げると機器の間から大地が見えた。それだけ車の構造がよく見え、車の原理がよく理解できた。カナダに住んでいる頃、運転免許を取りポンコツ車を買ったが、車検のない国だからしばしば故障した。
第18話 ホットハンドとホットレッグ
山地啓司(初代ランニング学会会長)
バスケットボールに“ホットハンド(hot hand)”と呼ばれるものがある。ホットハンドとは、試合中や練習中に神懸かりしたようにゴールを繰り返して決めるような時に使われる言葉である。正に“絶好調”と言う感じである。
第17話 心身はゆらいでいる(2)~パフォーマンス(記録)~
山地啓司(初代ランニング学会会長)
前回述べたように、心身には小さなゆらぎと大きなゆらぎがある。その中でスポーツのパフォーマンス(記録)を左右するのは大きなゆらぎである。
第16話 心身はゆらいでいる(1)
山地啓司(初代ランニング学会会長)
科学に求められる再現性は変動係数によって統計的に明らかにされ、それは標準偏差(SD)を平均値で割った商で求められる。物質科学の再現性は限りなく100%に近い。それに対して生命科学の再現性は80~90%以上であれば大方認められる範囲である。その主な原因は生体が環境の影響を受け絶えず揺れ動いているからである。
第15話 マラソンの集団形成のメリットとデメリット
山地啓司(初代ランニング学会会長)
1990年代に入ると東アフリカの高所民族と呼ばれるケニアやエチオピアのランナーの一攫千金を狙ったマラソンへの挑戦が始まったことから、これまでの安定したサバイバル(生き残り)レースが様変わりした。
第14話 身体(用)語
山地啓司(初代ランニング学会会長)
私の学期最初の「体育講義」は骨の話をすることにしている。骨が豊かと書いて、體(からだ)と書くように、骨は人体の正に屋台骨として各組織を支え護り、しかも、栄養や酸素を運ぶ血液をつくる工場として重要な働きをしているためである。
第13話 細胞分裂間に早い遅いがあるのか?
山地啓司(初代ランニング学会会長)
ヒトのからだは60兆個の細胞で形成されている。一個の細胞が分裂して2個の細胞になる。分裂前からある細胞を母細胞、分裂後にできた細胞を娘細胞というが、元の母細胞はしばらくすると死滅する。新しい細胞の娘細胞は母細胞と同じ機能を有し同じ働きをするため、からだは特別変調をきたさず、からだを形成している総細胞数も変わらない。
第12話 鉄は熱いうちに打て!
山地啓司(初代ランニング学会会長)
新聞に、ある家庭科の先生の授業であった話が掲載されていた。お菓子つくりの授業が終わりに近づき、「お茶でも飲みましょう」と生徒にお湯を沸かすよう指示すると、「湯沸かし器はどこにあるのですか?」「やかんに水を入れて沸かしなさい。」人数を全然考慮しないでやかん一杯に水を入れ、沸きはじめると、「温度計はどこにあるのですか?」と聞く。日本人の感性はどこへ行ったのでしょうか、と。
第11話 高所トレーニングの現在
山地啓司(初代ランニング学会会長)
低地民族にとって高所トレーニングの最大の弱点は、低所(sea level)で開催されるレースに必要な高強度のスピードのトレーニングが不足することである。
第10話 ペースメーカーの存在は世界記録を出にくくしている
山地啓司(初代ランニング学会会長)
1980年代に大都市でのマラソン大会が各地で実施されるようになると、開催地の都市同士がマラソン大会の価値なり評価を高めるためにより良い記録を競い合う形で、賞金レースとペースメーカーが誕生するようになった。さらに、今世紀に入るとトラックの長距離種目にもペースメーカーがつくようになった。
第9話 ドーピングは科学の冒涜である
山地啓司(初代ランニング学会会長)
2014年8月英国の新聞サンデー・タイムズは世界の陸上界に蔓延するドーピング疑惑の現状、特にロシアのスポーツ界では組織的にドーピングが行われている実態を糾弾した。その報道はリオ五輪を来年に控えて、世界のスポーツ界を揺るがすまでに発展している。
第8話 スポーツ科学の可能性と限界
山地啓司(初代ランニング学会会長)
現在は科学(サイエンス)や科学技術(テクノロジー)が加速的に進歩を遂げ、科学万能時代到来の観さえある。今日の医科学的成果の応用にはいくつかのターニングポイントがあるが、最近では1991年カナダの医師ギヤットがこれからの医療の指針である“科学的根拠に基づく医療”(evidence based medicine)を提唱したことがその1つである。
第7話 伸張‐短縮サイクル(Stretch-Shortening Cycle; SSC)のトレーニング
山地啓司(初代ランニング学会会長)
1964年イタリアのカバーニャは、筋肉の短縮性収縮直前の伸張性収縮が、弾性エネルギーの利用を引き起こすことを明らかにした。
第6話 スポーツは感性を磨く
山地啓司(初代ランニング学会会長)
先日文部科学省から全国小中高校などのいじめに関する2014年の調査が発表され、現場の先生方や教育関係者の努力にもかかわらず、一向に減らない事態が浮き彫りになった。
第5話 呼吸筋のトレーニングの必要性
山地啓司(初代ランニング学会会長)
1923年アメリカのゴルドンらはボストンマラソン直後のランナーの努力性肺活量が17%低下するのを、また、スイスのハグらは(1928;1929)2回のスイスマラソンで調査を行いそれぞれ16%と18%の低下を認めた。
第4話 頑張るこころと頑張れるからだ
山地啓司(初代ランニング学会会長)
体力を測る時、暗黙の了解として“全力を出し切る”ことが求められる。しかし本当に全力を出し切っているかを確かめる手立てはない。
第3話 ケニア選手が強いもう1つの理由
山地啓司(初代ランニング学会会長)
類人猿とヒトの最も古い祖先(ホモ・エレクトス)の比較から、人類は歩行や走行に都合のいいからだに進化してきたことが2004年BrambleとLieberman(Nature誌)によって発表された。それ以降人類学の分野でさらに興味深い研究が報告されている。それらを加味して、ケニア人の歴史的発育・発達や伝統的生活習慣からみたケニア選手の強さの秘密をもう一度見てみよう。
第2話 欧米人は伸筋を、日本人は屈筋を多用する
山地啓司(初代ランニング学会会長)
近頃の若い女性の歩き方が素晴らしく美しくなってきた。脚が伸びたこともあるがハイヒールも上手に履きこなしている。文化人類学の野村雅一は『しぐさの世界』で、明治初期の日本の民衆(私が思うに多分に農民の姿であろう)の伝統的姿勢を次のように述べている。
第1話 東アフリカ人の長距離・マラソンの強さの秘密を探る
山地啓司(初代ランニング学会会長)
今から約30年前の1986年には男子の800mからマラソン(3,000m障害も含む)で世界トップ20(1~20位)を占める割合はヨーロッパのランナーが48.3%に対して東アフリカ人が26.6%(ケニアに限定すると13.3%)であったが、17年後の2003年ではヨーロッパ人が占める割合は11.7%と激減し、それに対して東アフリカ人は85%(ケニア人が55.8%)と驚異的な伸びを示した。